2019年某地方都市
道を極めればプロ。
某地方都市で見た被告人は関西訛りの男だった。前科2犯、網走刑務所から出所して新しい地で生活し始めた。
罪名は「窃盗」。
検察は、被告人が金持ち宅に侵入し、金品を盗み、換金したと主張。
一方被告人は、道に置いてあるカバンを発見し、中にあった指輪や時計を見てやましい気持ちが働き、自分の物にし、後日換金した「遺失物横領罪」だと主張した。
さらに、「俺は泥棒のプロだから粗末な仕事はしない」と検察の主張に反論する己の仕事の鉄則を話し始めた。
満月は明るすぎる
「弁護人の先生によればこの日は満月だったみたいですね。あのね、僕は、満月の日は仕事をしないようにしとります。これはなんでかゆうたら、月って明るいからね。これだったら仕事はできない。バレるでしょ。夜。満月くらい明るいと物は盗れない。」
雨の日はウルサイ
「あとは防犯カメラ、犬、そして天気に気をつける。雨の日は絶対に仕事をしない。まず、歩く音がうるさいやろ。あとは逃走する時も滑るからだめ。全速力で逃げれんからね。
侵入する時も、雨がサーって降ってるところに屋内へ忍び込もうとして窓を開ければ雨音が大きくなって気づかれてしまう。ほいで、窓を開けることで室内の空気が少しだけ変わってしまう。ピーッと張り詰めてた空気が変わる。些細なことやけど、気づかれる。だから雨の日は仕事をやらない。」
ちょっとこの人の話面白いんだけど。換金の仕方にも己のルールがある。
「盗みが成功したとして換金は必ず2、3県飛ばす。例えば愛知で仕事をすると換金するのは静岡とかね。絶対に足がつかないようにする。同じ県で金に換えるってのはプロの仕事じゃないね。まずバレるもん。」
彼は同じ県内で窃盗をして換金をしたとして起訴されている。
被告人からすれば「俺はプロだからそんな事をしない」と言いたいらしい。確かに被告人だったらこんな雑な仕事しないかもしれないと思い始めてきた…。
前刑では総額1億ほどの泥棒を働いた「大物」だった。
彼曰く、東京地裁で検事に「お前の職業は泥棒だ」と言われ、本件の取り調べ検事には「大物やけん、あんたのクビとったら」と言われ自白を迫られた。俺は傷ついてるんだと言いたかったのかもしれないが、大物・職業泥棒と言われてちょっと嬉しかったんだろうなあ。
若い公判検事に取り調べの時の話や矛盾点を問われると「お兄さん、あんたシバくで!」「意地悪な奴やな」とニヤケながら言い放った。
それを「まあまあ」となだめる高森裁判長。この人はいつも落ち着きあっていいよねえ。
判決はどうなったか知らんが、追起訴もあったらしい。職業泥棒だなあ。今回はへたこいたんだろうなあ。
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