裁判傍聴を始めて間も無い頃に当時テレビで割と報道されていた広島呉少女殺人事件を傍聴する機会があった。
抽選傍聴、カメラ撮影、眠そうな裁判長、未成年の遮蔽、マスコミの生々しさ、初めての体験ばかりで印象的な事件である。
事件概要
アルファベットが多いのは堪忍してくだせえ。
広島市に在住するA(16歳)と被害者のB(16歳)は同じ通信学校に通っていた事もある友人だった。
仲が良かったのは最初だけ。事件が起きた頃にはAの彼氏のC(17歳)の事で度々喧嘩になった。BがCに対して色目を使っている、とAには見えていたらしい。
ラインで罵り合った結果、AはBをシバきあげる事を決意。広島弁で言うと「わりゃーええ加減にせえよ、しばきあげちゃるけーのー」といった状態である。
ラインにBの愚痴を書いたら共通の知り合いのD(16歳)とE(16歳)がBを誘い出す役を買って出た。ちなみにAとD・Eはこの事件まで会ったことはなかった。
Bとの待ち合わせ場所にはA、彼氏のC、D、E、友人で同居人のF(16歳)、その彼氏のG(16歳)、そしてGの友人のI(21歳)で待機した。Iのみ成人している。
Iが運転する車に全員が乗り込み、車内でBを待ち構えた。
何も知らないBは車に乗り込んだところAが待ち構えていてビックリ。車内で再び罵り合いになり、車を発進させたところでリンチが始まった。
殴る、蹴る、根性焼き、ライターで炙る。男2人と女2人が積極的に暴行した。
途中コンビニでカッターナイフを購入するなどのいきあたりばったり感はあるが、後部座席を倒しフラットにして外からは見えないようにしておくなど、ある程度の警戒もしていた。
Bのカバンから財布を抜き出し暗証番号を聞き出そうとしたが結局口を割らなかった為、現金のみ山分けした。
こんな暴行しているにも関わらずAはまたもやCがBに対し優しくしているように見えたという。
Aはココでプツンとキれ、車内にいる一人一人に向かっての謝罪を要求し、Bの首を絞めた。
瀕死の状態だったBにCが首をへし折ってとどめを刺し、山中へ投げ捨て帰宅。財布はIとGが島根に戻る際に庄原付近の山中で捨てた。
Bは誰にも見つからず灰が峰で腐敗していった。
後日、改悛の情が芽生え始めたAは自首を決意。ラインに「みんな、裏切ってごめんね。愛しとる❤️」などとふざけた事を書き込み、懲役13年を食らった。控訴はしなかった。
冴えない男
Iの検察側の証人として出てきたAは可愛い声をしていた。その受け答えには予習の成果が充分に見られた。Iの弁護人の厳しい質問にはイライラが顕著で台無しだったが。
AはIのことを「うちらにまとわり付いてくる金魚のフン」と表現。
遮蔽の向こうのAを見るIは凄い気迫だった。何しろ家族もいる目の前だ。5歳年下の女にこんな事言われたら堪らんな。
IはGと島根県内で強盗も犯していたこともあり、被告人の中で1番刑が重い判決となった。彼の携帯の日記は「寂しい」「誰か絡んで」といった文字で埋め尽くされていた。流されるまま犯罪者になった冴えない男だった。
記者クラブ
傍聴席が予め用意されているお偉いさん気取りの記者は休廷中に「Aの声可愛かったなァ」「意外と普通だよね」という会話を繰り広げていた。
あぁ、こんな奴らが書く記事に私らは翻弄されてるのか…。
仏様
この事件は伊藤寿裁判長が担当した。この裁判長、目を開けているのか開けていないのかわからない。仏様のような顔をしているのである。だから公判中ずっと寝ているのかと思っていた。そんな事はなかった。目を閉じながらもよく話を聞いている。洋画に登場するゲイを吹き替えた時の様なオットリ感で喋る裁判長。初心者には是非おすすめしたい。授業を受けているかのような法廷は他に知らない。
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