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道を極めた人たち

法廷の前に裁判所の職員が制服を着て立っていると「おっかねえ被告人の裁判やってるぅ」と肝が冷え冷えになる。

覗き窓から中を見るとビシィっと背筋を伸ばしたヤーサンが座っているのが殆ど。


ヤーサンの公判では裁判長の指示で職員を法廷内・外に配置させ、一番前の一列の席には傍聴人を座らせない場合がある。おっかねえからね。おっかねぇからこうしてるの。


かくいう人生で初めての傍聴はヤクザものだった。

傍聴する前に法廷の前で手荷物検査があるのは普通なのか〜と思っていたが振り返ればその時だけの経験である。おっかねぇから手荷物検査をするのだ。殺人未遂での起訴だったので、組同士の抗争の末の事件だったかもしれない。何の気なしに座れば怖いお兄さん二人が挟んできたのは今思えばおしっこちびる。しかし、この盆暗を警戒するお兄さん達は道が極まってない。こらえてつかあさい。


時は経ち雰囲気で被告人が極道の方か分かるようになった頃。

罪名には脅迫やら器物破損やら犯人隠匿がある。法廷前には職員もいる。被告人が5人もいる。こりゃスゲェ。ヤーサンのバーゲンセールだ。こんな大勢のヤーサンをいっぺんに見れる機会は流川か神戸、もしくはここ大阪地裁だけである。


組長から舎弟まで揃いもそろった5人。弁護人も当然5人。見た事がない弁護人たち…なるほど。ヤーサンのは国選弁護人じゃない。極道に強い人たちであるらしい。全員が前科4犯以上。弁護人に一任している。半グレはよく喋る印象があるが、極道は寡黙なのだ。なるほど。


そんな彼らも現代では生活が厳しいらしい。裁判所で暴力団を脱退した被告人の話もよく聞く。道を極めてもしんどいんだなあ。転職する時はヤクザだけはやめておこう。

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