「ゴードン・ノースコット」。
1920年代のアメリカ・カリフォルニア州の連続殺人犯。日本では何故かあまり知られていない。理由を考えると、もっと他にインパクトが強い殺人鬼がゴロゴロいる国だからかもしれない。
ゴードンは、幼い男児を誘拐して親戚の農場で監禁。男色だったようで、いたぶり、もてあそび、そっち系の趣味のある大人にレンタルして小銭も稼いでいた。その被害者数は20人以上とみられる。
ゴードンの誘拐の手口は割と考えられていた。
中学生のティーンエイジャーのイトコを助手席に乗せ、目当ての少年に話しかける。少年らは最初は警戒するが、助手席にいる同じくらいのイトコを見ると信用しついてくるってわけ。
でもそんな手口もいよいよ終わりが来る。誘拐していた現場を近所の住民に目撃されていた。警察が共犯のイトコを問い詰めた結果、殺人を自白。この従兄弟は、ゴードンに「死にたくなれければお前も殺せ」と強要・脅迫され、怯えながら犯行に加わった。彼も被害者のひとりだったのだ。
ゴードンはカナダに逃走したのちにアメリカで逮捕される。3人の殺害で起訴され、死刑が確定した。
被害者の一人に、コリンズという当時5歳の男児がいた。母親は息子を探し回り、5ヶ月後、警察から遠く離れたイリノイ州で「息子さんが見つかった」との連絡を受ける。
しかし、再会した息子は息子ではなかった。
背は縮み、顔つきもまるで違う。教師は「これはお宅の息子ではない」と言った。歯医者は「歯型がまるで違う」と言った。
母親は警察にこの事を訴えたが、「勘違いでは?」と一蹴され、なんども詰め寄ると「お前は異常だ」と精神病院に隔離された。
この時代のアメリカだとあり得そうな話。もちろんその精神病院も普通の病院じゃない。「警察専用」の精神病院だった。
それでも母親は立ち向かい、賛同してくれた協力者と警察に打ち勝つ。
偽物の息子を演じた少年は家族との折り合いが悪かったので、田舎町から抜け出したく、嘘の話をしたのだと言う。
警察の杜撰な捜査は露出され、大批判を浴びた。しかし、息子のコリンズはいつまでも見つからなかった。
ゴードンの農場に彼らしい骨片はあったが、コリンズのものだという確証はなかった。誰もが息子はゴードンの手によって殺害されたと母に聞かせたが、母親はまだ何処かで生きていると人生をかけて探した。
ゴードンは命乞いをしながら、悪名高きサン・クエンティン刑務所の死刑台で醜く死んだ。こいつの人生一体なんだったんだ。
連続殺人事件は「一連の事件」として見るのではなく「一つの事件」としてひとつずつ、ひとつずつ、見ていきたいといつも思う。
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